障がいを理解し、行動につなげる〜役員が障がいを体験する「マイノリティ体験プログラム」リポート〜
皆さん、こんにちは! パナソニック コネクト、From the Inside編集部です。パナソニック コネクトの取り組みを内側からレポートする当シリーズ。今回は、2024年8月に社内で実施した「マイノリティ体験プログラム」の様子をお届けします。
執行役員18名がユニバーサルマナー検定3級を受講
パナソニック コネクトは多様な人材が能力を最大限発揮できる環境を目指し、かねてよりDEIを推進しています。
ジェンダー、育児、介護、LGBTQ+、障がい、闘病、キャリア入社、外国籍、ジェネレーションという9つのマイノリティギャップを設定するなかで、年度ごとに注力する領域を決定。今回は、2024年度の注力領域の一つである「障がい」について、「バリアバリュー」の視点で幅広い活動を行う株式会社ミライロさまの協力のもと、当社本社オフィス(東京都中央区銀座)にてマイノリティ体験プログラムを開催しました。
参加したのは、CEOの樋口さんをはじめとする、全国の拠点から集まった執行役員16名。
役員の皆さんはすでに「ユニバーサルマナー検定3級」を取得しており、今回のプログラムを通じて、障がいのある方が日常生活で感じるバリアへの理解を深めるとともに、ハード面・ソフト面に対するアップデート促進や組織のインクルージョン、誰もが働きやすい職場環境の実現へ向けてクリアすべきバリアの存在などを見つめ直していきます。
プログラムの内容は「聴覚障がい体験」、「視覚障がい体験」、「車いす体験」。障がいのある方が困っていたらすぐに簡単なサポートができる、基本的かつ実践的な構成となりました。
今回は初回として役員メンバーに限った開催ですが、一般社員に向けた同様の体験プログラムを、全国の9拠点で実施する予定で、既にスタートしています。
“伝える”難しさを知った聴覚障がい体験
最初に行ったのは聴覚障がい体験です。二人一組のペアとなり、一人がイヤーマフを付けて外部からの音を遮断、もう一人が「両替してください」といった内容を声以外の方法で伝えるというもの。
方法は筆談、口話、空書(筆記具を使用せず、指で空中に文字を書くこと)など自由でしたが、手元に筆記具やスマートフォンがなかったペアは、一生懸命ジェスチャーをしたり、指で数字を表現したりするなど、苦戦している模様です。
正解が発表されると、あちこちから「想像以上に難しい」、「伝え方をもっと意識する必要があった」という声が。
講師を務めてくださったミライロの滝田裕一さんによると、聴覚障がいのある方は「コミュニケーション」に不便を感じることが多いそうです。手話をマスターするにはハードルが高いため、筆談が「伝えるための手段」として一般的ですが、聴覚障がいのある方全員が筆談できるわけではありません。手に麻痺がある、視力が低下しているなど、さまざまな症状を抱えている方もいるからです。
「『筆談でも大丈夫ですか?』とまず声をかけ、ご希望をお聞きしましょう。聴覚障がいのある方に限った話ではありませんが、『選択肢を提供する』という心構えを大切にしていただければと思います」と滝田さんは教えてくれました。
視覚障がい体験を通じて学ぶ、今の自分にできること
次に体験したのは、視覚障がいのある当事者とサポートをする誘導者です。人は情報の8割を視覚から得ているとされるため、視覚障がいのある方は「情報不足」に不自由を感じるといいます。ここでは一人がアイマスクをして白杖をもち、もう一人が誘導者となって、オフィス内を歩いてみることに。
誘導者が意識するポイントは3つ。
1つ目は「何かお手伝いできることはありますか?」と声をかけてから、ポンポンと軽く肩に触れ、こちら側の意思を示すこと。
2つ目は誘導者が視覚障がいのある方の斜め前を歩き、肘や肩をもってもらうこと。斜め前を歩くのは何かしらの理由によって立ち止まるとき、視覚障がいのある方が止まれず飛び出してしまう恐れを防ぐためです。
3つ目は「10mほど真っ直ぐ進みます。3歩先に上りの段差があります」と具体的な表現や数値を用い、コミュニケーションを取りながら移動すること。これらを踏まえるだけでも、視覚障がいのある方が感じる情報不足を大分補えるそうです。
いざアイマスクを付けてスタートすると、勝手知ったるオフィスとはいえ、佇まいはどこか不安げ。しかし誘導者役が丁寧に伝える情報と白杖を頼りに、ゆっくり歩を進めていきます。体験後の率直な感想は、「恐怖を感じたが、誘導者の存在が心強かった」がほとんど。廊下に出た時に感じる空気感の違い、立ち位置を把握しようとする感覚、絨毯やフローリングといった足元の素材など、普段、気に留めていなかった視覚以外の情報を知る経験となったようです。
移動におけるバリアを感じた車いす体験
最後は車いすを体験しました。車いすに移乗する際はまず、駐車用ブレーキがかかっているか、足を置くフットサポートが跳ね上がっているかを確認。そして動き出す前に、フットサポートに足が乗っているか、足を支えるレッグサポートがついているかを確認します。麻痺があると足を地面にひきずっていることに気づかない危険性があるため、注意が必要だとのこと。介助者がいる場合は、利用者の指がタイヤに挟まれてしまう恐れがあるので、腕がアームサポート(肘掛け)の上に乗っているか、内側に収まっているかのチェックも大切です。
会場にはスロープが設置され、車いすで上り下りを行いました。車いすユーザーである人事部門の水島さんが実演してくれたところ、スイスイとスロープを上り、段差まで降りてしまう様子に、会場からは拍手喝采。しかしこれは水島さんだからできること。実際に体験すると、自力で上がることもなかなか難しい様子です。介助者がいれば問題ありませんが、一見、緩やかなスロープであっても、一人での上り下りは負担が大きいのです。
次は車いすに乗ったまま会場を出て、オフィスエリアへ移動。
ここでは「床が絨毯だと摩擦が生じ、漕ぐだけで疲れてしまう」、「車いすでは目線の高さが下がるので、普段歩く速さで押してもらっても体感スピードが早く感じた」、「開き戸タイプのドアの開閉が難しい。周囲の人の邪魔になっているのではないかと、申し訳ない気持ちになったが、当事者にそう思わせないための環境づくりが大切であると実感した」などの感想がありました。
「車いすユーザーの方が必要とするサポートは『移動』に関するものが中心です。車いすを押すときは、常に介助用ブレーキに指を添え、『速さはこのくらいでよろしいですか?』と尋ねて差し上げてください」と滝田さんは話します。
誰もが働きやすい職場を実現するために
聴覚障がい、視覚障がい、車いすの体験を終えると、役員たちから滝田さんへ次々と質問が。滝田さんは一つひとつの質問に対し丁寧に答えてくださり、「ハードを変えなくとも、小さな工夫や優しさで解決できることはたくさんあります。今回のプログラムを通じ、そのような気づきを得ていただけましたら幸いです」との言葉で、マイノリティ体験プログラムは幕を下ろしました。
山口有希子さん/取締役・CMO、DEI推進担当、カルチャー&マインド改革推進担当
「パナソニック コネクトでは障がいのある社員全員にヒアリングを行っているので、お困り事等の課題感は概ね把握しています。
その課題への対応策としてもっとも有効なのは接し方、つまり障がいのある方への接し方を自ら考え、正しい配慮をすることが大切なんですね。障がいを理解し、行動する。そしてその行動が、全社員に伝搬していってほしい。だからこそ組織内で影響力のある役員が、今回のプログラムを体験することに意義がありました。DEIの本質は『思いやり』です。それが社内に広がっていくことで、より働きやすい環境がつくりだせると考えています」
仲田百合さん/執行役員・CSuO
「今回、障がいを体験したことで得られた気づきが数多くありました。
今すぐにハードをすべてアップデートするのは、難しいかもしれません。しかし車いすユーザーの方がいらしたらドアの開け閉めをお手伝いしたり、視覚障がいのある方が賑やかな場所で恐怖を感じないようお声かけをしたり、準備すら必要とせずにできることはたくさんあります。障がいの有無に関わらず、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えるのは、私たち役員の責務ですから」
加藤大地さん/執行役員
「障がいのある方々の立場に立ち、ハードとソフトの両方の面から取り組んでいく必要があると強く感じました。私は製造拠点を担当しているのですが、工場内では材料が山積みで、日によって置いてあるものが異なることも多々。ですが障がいのある方にとっては、それがバリアになってしまいます。この状況を改善すべく、策を講じていきたいですね。それは“特別なこと”ではなく、企業として“当たり前のこと”だと考えています」
現在、パナソニック コネクトでは127名、特例子会社のパナソニック吉備で36名、パナソニック交野で32名の障がいのある社員が勤務しています。
パナソニック コネクトにおける給与形態は一般社員と同じで、職種や部門に偏りもありません。ハード面ではアクセシブルMAPの作成、車いす専用駐車場の確保、自動販売機のバリアフリー化、緊急時の避難設備の設置といったインフラを中心に整備を行い、ソフト面では手話講座の開催や合理的配慮セミナーなどを実施しています。
障がいのある方はもちろん、社員の誰もが能力を最大限発揮できる環境の実現のため、日々DEIの取組を推進するパナソニック コネクトの姿を、これからも発信していきます!
【パナソニック コネクトのDEIの取り組み全容はこちら】
Diversity, Equity & Inclusion - パナソニック コネクト (panasonic.com)
本記事内で紹介された障害当事者体験ができるプログラムは、株式会社ミライロさまが運営する、ユニバーサルマナー検定で体験が可能です。
詳細は「ユニバーサルマナー検定」のWebサイトをご確認ください。
ユニバーサルマナー検定