「社会システムを見つめ直す癖」がエクイティ(公平性)の実現につながる―コネクトDEI Month2023オープニングセッション―
皆さん、こんにちは! パナソニック コネクト、From the Inside編集部です。パナソニック コネクトの取り組みを内側からレポートする当シリーズ。今回は、2023年10月2日に開催された、「コネクトDEI Month2023 オープニングセッション」の様子をお届けします。
一人ひとりが、イキイキと働きながら自分らしさを活かし、能力を最大限に発揮するため、何をおいても妥協できない「人権」の問題として、「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」に取り組んでいる当社。
2017年より様々なDEI推進の取り組みを進めてきましたが、今年は新たな試みとして10月をコネクトDEI Monthと定め、セミナーや体験会など、DEI
に関するイベントを集中的に実施し、CONNECTer(パナソニック コネクト社員)一人ひとりが様々なDEIに触れあえる月間としています。
そんなDEI Monthの幕開けとして社内向けに実施されたオープニングセッションでは、アーティスト・東京藝術大学准教授・Cradle代表でご活躍のスプツニ子!さんをゲストにお迎えしてスピーチをいただいたほか、DEI担当役員である西川 岳志さん(CFO)とDEI推進室 シニアマネージャーの油田さなえさんと三人でのパネルディスカッションが行われました。
【パナソニック コネクトのDEIの取り組み全容はこちら】
Diversity, Equity & Inclusion - パナソニック コネクト (panasonic.com)
オープニングセッションの冒頭では、どんなに企業価値が向上したとしても、人権の尊重なくして企業の存続はない、という当社の考え方が改めて西川さんより共有され、育児や、介護、LGBTQ+、障がいといった領域でパナソニック コネクトが今まで取り組んできたDEI推進の取り組みを振り返りました。
「DEI担当役員を3年間経験するなかで、DEIは何か難しい特別なものではなく、『思い込みを捨てて、思いやりを持つ』、ただそれだけなのだと気づきました」と西川さん。
「自分が育ってきた環境の中でなんとなく『こうあるべき』と思っていたものがたくさんありますが、そういった思い込みを捨てると、自分自身もすごく楽になれたような気がするんです。皆さんも子供の時に『人に優しくしましょう』と教えられたと思いますが、それと同じで、思いやりの気持ちで周囲の人に接していると、それが積み重なって自然にDEIになるのではないかと思います」
スプツニ子!さんからは、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の「エクイティ」の意味を掘り下げ、理解を深めるためのスピーチが。
「エクイティを考えるための前提として、そもそもなぜダイバーシティ(多様性)がこれだけ世界で重要視されているかというと、ダイバーシティがイノベーションに直結しているという結果がたくさん出ているからなんです。
イノベーションは世の中に存在する課題を見つけ、解決することで生まれるものですが、様々な方向にアンテナや視点を持っていないと、課題発見も解決も難しくなってしまうんですね。でも、多様性があると古い習慣や思い込みに対して新しい視点や疑問をもって自由に変化、修正、組み合わせをすることができるから、イノベーションが生まれやすいんです」
逆に多様性が低い集団では、皆が同じ意見を持つ「グループシンク」の状態になってしまうため、自分たちの集団に対して過大評価する、都合の悪い情報を遮断する、集団の決定に異論を唱えるメンバーに圧力をかける、といった症状が起こりやすく、新しいアイデアや意見を出しづらい、イノベーションの起こらない風通しの悪い組織になってしまいがちとのこと。
ダイバーシティのメリットと、ダイバーシティがない場合のデメリットが理解できたところで、本題の「エクイティ(公平性)」とは何か、の話に進みます。
「ダイバーシティ推進の話をするときに『女性活躍なんて逆差別だよ。今の時代、能力がある人がやれば良いんだから男も女も関係ないよ』といった声がよくあがりますが、そこには落とし穴があり、私たちが今いる社会の構造や働き方のシステムなどを、今一度冷静に点検する必要があります」とスプツニ子!さん。
「女性が大学で勉強しても、どうせ結婚して妊娠出産してキャリアを諦めるからという理由で、医大受験において女性の点数を減点するという組織的な構造が、つい数年前まで存在していましたよね。
そもそも社会や企業の構造が、男女や人種関係なく多様な人が活躍できる社会システムになっているかを見つめ直す必要があるんです。『女なら、男なら、母親ならこうあるべき』といった世の中のアンコンシャスバイアスも当人を苦しめる社会構造の一つで、女性に限らず、『男性なのに育休とるの?』といった声に苦しんでいる男性もいます」
他にも、一部の企業において存在する、管理職に昇進するためには海外勤務経験が必須というルールについて、海外勤務のピーク年齢である30歳は、女性が妊娠・出産するピークと同じ年齢であるといった例を挙げ、ルールとしてはフェアかもしれないけど、実際には公平ではない、といった状況が様々な場面で生じていることをスプツニ子!さんは語りました。
このように、差別する意識が全くなくても、社会や企業全体の構造によって特定の属性にとって不利な状況が生まれ続けてしまうことを「構造的差別」と呼ぶのだそうです。
「ポイントなのは、悪者は一人もいないということ。誰もいじめる気なんて全くない。不利益を被っていない人たちにとっては、この構造が当たり前だから、そこにある偏りが見えないんです。この構造的差別をなくすために重要なのは、構造のデザインを一番変えやすい立場にいる管理職や経営層が多様なアンテナ・視点を持つことだと思います」
最後に私たち一人ひとりが持つべき意識をラップアップし、スプツニ子!さんはスピーチを締めくくりました。
「企業全体の働き方や社会のシステムに偏りがあったら、その偏ったシステムでいくら平等を唱えてもエクイティ(公平)ではないんです。ダイバーシティについて考えるときは、一度立ち止まってシステムを見つめる癖をつけることで、課題をもっと理解し、思いやりを持てるようになるのではないかと思います」
続いて、スプツニ子!さん、西川さん、油田さんのパネルディスカッションに進み、参加者からの質問に答えていただきました。
「エクイティに対してCONNECTerが今すぐにアクション出来ることはありますか」という問いに対して、スプツニ子!さんからは改めて「システムを点検する癖」の重要性についてのお話が。これに対し、周囲の人々に全く悪気はないけれど、子供の送り迎えの時間帯に会議を入れられてしまうといった不利益を被る側だったからこそシステムの偏りに気づくことが出来たという油田さんも「自分の立場に関わらず、偏りに気づいたら遠慮せず声を上げることが大事」と同調しました。
「点検する癖ももちろん大事ですが、点検して気づいたことを皆が遠慮せず言えるような雰囲気を作っていくことがより大事かなと思います」と話したのは西川さん。スプツニ子!さんも大きく頷きました。
「仰る通り、管理職じゃなくても声をあげられるのが心理的安全性の理想。これを言ったらわがままかな?と思って躊躇している人もいるだろうから、決してそんなことはないですよ、というメッセージを会社側から繰り返し発信することで、声を上げやすくなるかもしれません」
その言葉を受けて、西川さんは「今日、このオープニングセッションに参加してくださっている皆さんにお伝えしたいです」と再びマイクを手にしました。
「言ってもらえたら、多くの上司が否定するよりも『教えてくれてありがとう』という気持ちになると思います。恐れずに言って、それを感謝し合う文化は、きっとコネクトにはもうできあがっています。思っていることを言ってみて、それを否定し合うのではなく、『立場が違えば見え方も違うよね』といった気持ちで受け入れる、ということを大事にしていけたらと思います」
会場から参加しているCONNECTerからは、「『あなたは意見を言える人だからあなたが言うべき』、という周囲からのプレッシャーを感じることがあります。そういう人と、逆に意見があるけど言えない人、それぞれへのエールをお願いします」とのリクエストが。
「私も意見を言える側だったのでよく分かります。上司にこれを言いに行こうって皆で決めたはずなのに、気が付いたら皆は後ろに一歩さがっていて、私一人で上司と話している、といったことが良くありましたから」と西川さん。
「その時は、『言った者負けだな』と思ったものですが、その後数年たつと、『実は言った者勝ちだったな』と思えることがたくさんありました。ちゃんと見てくれている人はいるし、あの時一歩下がった人たちもずっと感謝の気持ちを忘れないでいてくれているので、同じ立場の皆さんにもこれからも言い続けていただけたらと思います。意見を言えない人がダメということも決してなくて、言ってくれた人にちゃんとありがとうを伝えれば良いのかなと私は思いますね」
「自分のコンフォートゾーンを越えてしまうので言いづらい、ということであれば無理しなくて良いと思います。自分のコンフォートゾーンを大事にして、自分のできる範囲でやりましょう」とスプツニ子!さん。
「もし言いづらいという問題があるのであれば、言いやすい環境づくりをするのは会社側の義務ですから」という言葉に西川さんも頷きました。
「みんながコンフォートゾーンにいるまま、気持ちよく働ける環境を作るのがシステムの責任ですが、システムにアドバイスするつもりで、『こういう課題があるよ』と声を上げるのはすごくポジティブなことだと思います」
最後に、スプツニ子!さんからCONNECTerへのメッセージをいただいて、オープニングセッションは終了しました。
「みんながウェルビーイングを保てるよう、偏りがないように、より良いシステムの構築を目指していくこと。偏りがあったとしたら、きちんとコミュニケーションができるようなデザインになっていることがすごく重要です。まだ試行錯誤している部分もあるかもしれませんが、こうやってイベントを通して社員の皆さんに発信していくことはとても大事なことだと思います。応援しています」
「今までそうだったから」と存在を当たり前のように受け入れ、疑問を抱くことがなかったシステムにも、立場の違う人にとっては偏りがあるかもしれない。そう疑ってみて、一度見つめ直してみることが「思いやり」の始まりだと、このオープニングセッションを受けて気づきました。
自分自身が気づいた小さな違和感を流さずにきちんと正面から向き合うことや、誰かに対して押し付けてしまう危険性があるだけではなく、気づかぬうちに自分自身が囚われてしまっているかもしれない「こうあるべき」から離れてみることを、日々大事にしていこうと思います。
From the Inside編集部は、引き続きコネクト DEI Month2023の取り組みを発信して参ります!