期待以上のソリューションを提供する技術者の突破力
それぞれの働く現場でいきいきと活躍する社員を紹介する「Meet the CONNECTer」。今回は2006年の入社以降、一貫して溶接の現場に従事する湯澤大樹さんにご登場いただきます。溶接は多岐にわたる業界を支える非常に重要な技術。湯澤さんはお客さまのご要望と相反することの多い「溶接の物理現象」と向き合い、期待を超える最先端の溶接特性を開発するなど、製造工程における生産性向上に貢献されています。仕事にかける情熱と意識の在り方、そして自身が描く未来など、さまざまなお話をお聞きしました。
湯澤大樹
2006年松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)入社し、一貫して溶接の現場に従事している。技術部に4年間所属。アーク溶接ロボットの溶接特性開発を担当した後、技術営業兼前線の技術者として14年間(内3年間はアメリカ・デトロイトに駐在)マーケットイン職場にて、クライアントの製造工程における生産性向上に貢献する施工実証提案業務に従事。現在は溶接プロセス事業部プロセスエンジニアリング課にてクライアントの業界を調査し、課題の抽出・集約からニーズをリードするソリューション開発を実施している。
物理現象を克服し、高効率な製造プロセスを実現
編集部:湯澤さんがエンジニアを志したきっかけを教えてください。
湯澤:私は幼少期から工作や物理が好きな子どもでして、中学生の頃からパソコンをいじっていたため、次第に遊ぶ側からつくる側の人間になりたいと思うようになっていきました。そんな矢先、父の転勤でオーストラリアのシドニーへ。シドニーの高校ではプログラミングの授業があり、技術の可能性に触れたことで将来のビジョンがより明確になりました。
人の役に立つロボットを開発したい、尊敬できる父のように世界を股にかけた仕事をしたい、そのように考えた私は帰国後、大学と大学院で電気電子システム制御工学を専攻します。ここで溶接作業環境の改善となるアーク溶接ロボットの協調制御を研究し、溶接ロボットメーカーとしても名が知られていたパナソニックに入社。溶接の物理現象の奥深さに魅了され、この道を極めてみたいと考えました。
編集部:現在、湯澤さんがパナソニック コネクトで取り組まれている業務とは?
湯澤:第一線の技術者として、アーク溶接ロボットの溶接性能を左右する溶接特性(波形)の開発を担当しています。アーク溶接とは、簡単にご説明すると、アルミや鉄など金属同士を接合する技術のことです。接合自体に価値はありませんが、接合されたものが構造物や商品となり、価値を生み出します。溶接技術そのものはシンプルである一方、溶接現象の詳細なメカニズムはまだ解明されていないため、物理や化学が入り混じった奥深い物理現象です。
パナソニック コネクトの最先端のアーク溶接技術にさらに磨きをかけ、業界をリードするお客様と共創し、世界的にも他に類を見ない革新的なソリューションを創出することが私のミッションです。
編集部:AI技術を筆頭に、近年の科学技術は急速に進化を続けています。アーク溶接はどのような進化を遂げていくと予測されますか?
湯澤:アーク溶接に用いられる「アーク」という光の円弧が発見されたのが1807年。このアーク熱を利用したアーク溶接が本格化して100年以上経った現在においても、溶接機の進化は飽和していません。それはさまざまな最先端ツールを駆使しても、未だ溶接現象のメカニズムを完全解明することができないからです。
現場に目を向けると、お客様の製品を効率良く製造するため、溶接工程の生産性を向上させる要望が常に出てきます。また、競合他社より高い生産性はもとより、お客様要望を越える生産性をより早く実現することも求められます。私たちはその期待に技術で応えるため、商品・ソリューション開発において、仮説と検証を繰り返し、完全解明されていない複雑な溶接現象を狙ったように挙動するメカニズムを考え、具現化することで、今までの溶接機・ロボットではできない、飛躍的に高品質、高効率な製造プロセス提供を目指しています。
アーク溶接の将来に目を向けると、現在は生産現場において溶接不良が発生した時、熟練作業者が対処法を考えてロボットプログラムを修正・変更して改善を図っていますが、今後は、世界的な省人化、異次元の高品質化に対応するため、AI技術などを取り入れ、溶接ロボットが自律的に考え改善し生産性を向上させる生産工程のオートノマス化が求められていくと思います。
スキルと個性を組み合わせた自分だけの強みを活かす
編集部:お仕事における「やりがい」をお聞かせください。
湯澤:アーク溶接の技術はありとあらゆる業界で用いられています。自動車、バイク、造船、建設機械、宇宙ロケット、鉄骨橋梁、農機具、家電、住宅建材、その他もろもろ、「世界は溶接でできている」と言っても過言ではないでしょう。溶接は縁の下の力持ちのような存在で、幅広い業界に貢献できることに、やりがいを感じています。たとえば、街でよく見かける自転車をはじめ、東京スカイツリーや海外の大型スポーツイベントのメインスタジアムなどの建設にも、パナソニック コネクトの溶接機が使われているんですよ。
編集部:溶接は私たちにとって身近な技術なのですね。お客様が抱える課題において、共通性などはあるのでしょうか?
お客様が抱える課題はさまざまですが、みなさん「少しでも高い品質の製品を、低価格かつ効率的なプロセスで生産したい」と悩まれています。とはいえこの課題に向き合うと、先ほどお話しした完全解明されていない溶接の物理現象の壁に必ずぶつかります。しかし、それぞれの課題における溶接の物理現象を最適に制御し、お客様の期待以上の生産性を実現したとき、その結果が「受注」という形で現れます。
私たちの職場は営業チームだけでなく、自分のような技術者もお客様と会話をする機会があります。つまりお客さまから最終的な評価を直接いただけますので、製品にご満足いただけたと分かると、どれだけ難題であっても突破してよかったなと実感しますね。
編集部:お仕事に取り組むうえで常に意識されていることは何ですか?
湯澤:お客様の要望は、溶接の物理現象と相反することがほとんどです。ですが「できません」とあきらめず、お客様の課題と真摯に向き合い、タイムリーにお客様の要望を上回るソリューションを開発することが大切だと考えています。最先端ツールにより可視化された現象が、なぜ発生するのかを深く考え抜く。深掘りすることは重要である一方、集中しすぎると視野が狭くなるため、課題解決へ向けて深掘りと全体の俯瞰のサイクルを繰り返すことを心がけています。
私より高いスキルをもつ人は世界にたくさんいるでしょう。しかし、自分のスキルと個性の両方をもつ人間はいないはず。その両方を活かしつつ、会社への貢献を最大化するにはどうすれば良いか、それを常に考えています。溶接特性開発は溶接機やロボットの性能を左右するコア技術。期待を上回る性能の実現は商品・ソリューションの価値を大きく向上させますし、競争力強化にも直結しますので。
目指すのは溶接業界の世界ナンバーワン企業
編集部:自己成長のために取り組んでいることはありますか?
湯澤:日常的な業務に関連することでいうと、自社の技術に注力するあまり、その技術が井の中の蛙とならないよう、溶接業界動向はもちろん、お客様の業界動向や社会動向にも常にアンテナを張っています。また、チームの総合力向上を目指し、後輩の育成にも努めています。
加えてラーニングプラットフォーム「Udemy Business」や研修も積極的に受講しています。一般的な企業では自費で学習しなければならないことも、パナソニック コネクトでは社員全員が「Udemy Business」を無料で利用できる環境を整えてくれていたり、さまざまな研修を開催してくれています。個人が持続的かつ能動的な成長ができる環境を提供してくれているので、素晴らしいなと感じています。
編集部:ラーニングカルチャーを醸成する環境は、自律的なキャリア形成にもつながりそうですね。そのほかにも湯澤さんがお感じになる、パナソニック コネクトで働く魅力をぜひ教えてください。
湯澤:私が所属する溶接プロセス事業部は自分の業務範疇にとらわれず、部署や地域を越えて助け合う文化があることが自慢です。話していると相手の顔が思い浮かぶといいますか、心理的距離間が近いと思います。たとえそのテーマが自分の仕事と直結しなくても、みんなで課題解決へ向けて助言し合い、全員で成功しようという風土が根付いているのです。開発した商品はグローバルに販売されますので、自分の仕事が社会に役立つことに貢献できるのも嬉しいですね。
編集部:パナソニック コネクトのパーパス「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」の実現を、ご自身の業務でいかにして達成していきたいとお考えですか?
湯澤:溶接が表舞台に立つことは決して多くはありません。しかし確実に、社会の幅広い業界を支えるために必要な技術です。溶接特性開発は現場を飛躍的に改善させ、お客さまがつくるものを通じて社会課題を解決し、未来へ前進していると強く感じます。
これからもお客さまの課題に寄り添い、共創し、生産性の飛躍的な向上に貢献する世界初のソリューションを連打していきます。目標はパナソニックの溶接事業を、溶接ソリューションにおける世界ナンバーワンにすること。グローバルのどの地域においても、「溶接といったらパナソニック コネクト」、「パナソニック コネクトに相談したらなんでも解決してくれる」という存在を目指していく。それはすなわち、溶接を生業にするお客さまに、一番お役立ちできているということですから。
私の好きな言葉で「早く行きたければひとりで行け。遠くに行きたければみんなで行け」というアフリカのことわざがあります。自己のスキル向上だけでは到底到達することのできない遠い場所、まさに革新的ソリューション(オートノマス)を、みんなで実現させていきたいですね。
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